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名古屋高等裁判所 平成12年(ラ)41号 決定

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告人は、「原決定を取り消す。抗告人が本件訴訟に被告らを補助するため参加することを許可する。」との裁判を求めるというものであり、抗告の理由は別紙抗告状(写し)の「抗告の理由」及び「参加を相当とする理由」と題する書面(写し)にそれぞれ記載のとおりである。即ち、補助参加は、被参加人敗訴の判決による法的地位への事実上の影響を防止するためのものであるから、判決理由中の判断であってもそれについて法律上の利害関係を有する場合には、補助参加が認められるべきであり、本件訴訟で被告ら敗訴判決があった場合、予想される理由中の判断について、補助参加人は法律上の利害関係を有している旨主張する。

二  当裁判所の判断

1  民事訴訟法四二条は、「訴訟の結果について利害関係を有する第三者は、当事者の一方を補助するため、その訴訟に参加することができる。」と規定している。右規定は、補助参加人が被参加人を補助して訴訟を追行し、被参加人を勝訴させることによって、自己の法律上の利益を擁護するための規定と解され、補助参加できる者と規定されている「訴訟の結果について利害関係を有する第三者」の範囲も右趣旨に従って解すべきである。ところで、判決の主文で示される権利又は法律関係についての判断が当事者を拘束することになる訴訟における結論であるから、右判断が「訴訟の結果」と解され、右判断が、補助参加人の権利義務その他の法律上の地位に影響を及ぼす場合には、補助参加人は前記判断に法律上の利害関係を有することになる。しかし、判決理由中の判断は、当事者も第三者もこれに拘束されないから、判決理由中の判断は第三者の法律上の利害関係に影響を与えないといわざるを得ない。また、補助参加の制度は、前記のとおり被参加人が勝訴判決を受けることにより補助参加人も利益を受ける関係にある場合に参加を認めるものであるから、被参加人が勝訴判決を受けることにより補助参加人が不利益を受ける関係にある場合に参加を認めることは、民事訴訟の構造に反することになり、採り得ない見解である。

そうすると、補助参加人の権利義務、法律上の地位に影響を与えるか否かは、訴訟物である権利関係の存否の判断を前提として決せられ、これを離れて、そこに至る過程の判断が、法律上の地位に事実上影響を及ぼすというだけでは足りないということになる。したがって、判決理由中の判断も「訴訟の結果」に含まれ、その判断について利害関係を有する場合にも補助参加が認められるとする抗告人の見解は採用することができない。

2 本件訴訟は、被告らが抗告人の取締役としての忠実義務に違反し、①抗告人の第四八期(平成七年一月一日から同年一二月三一日まで)及び第四九期(平成八年一月一日から一二月三一日まで)の各決算においていわゆる粉飾決算を指示した又は粉飾の存在を見逃し、②税引前利益を粉飾したことにより法人税、住民税等を過払いし、③抗告人の業務執行に関し被告らに不正の行為を疑うべき事由があったため、商法二九四条により選任された検査役に報酬を支払い、④第四九期決算において実際は多額の営業損失が存在するにもかかわらず営業利益の粉飾を指示しあるいはこれを見逃して、株主に利益配当をし、これら①ないし④により合計二億三一三〇万五二〇〇円の損害を抗告人に与えたとして、抗告人の株主である相手方が、抗告人のために、抗告人の被告取締役らに対し、取締役の責任を追及する株主代表訴訟である。したがって、本件訴訟の訴訟物は、被告らの抗告人に対する忠実義務違反に基づく損害賠償請求権及びこれについての遅延損害金請求権であって、本件訴訟の判決の主文における判断について、抗告人は、原告である相手方とは実体法上の利害を共通にするもので、対立する関係にはないのに対し、被告らとは実体法上の利害が相反し、対立する関係にあることが明らかであり、もし、被告らへの補助参加を認めることになると、抗告人は、自己に帰属し、自らがその存否について既判力を受ける損害賠償債権につき、その存在を争う当事者のために訴訟行為をすることが許されるという関係になり、前記のとおり民事訴訟の構造に反する結果となるといわざるをえない。

3 たしかに、判決理由中の判断によって、第三者の法的地位に事実上影響が及ぶという意味で、第三者が一定の利益を有する場合のあることは否定できない。特に、株主代表訴訟である本件においては、抗告人の取締役会における意思決定手続が手続的に正当であるか否かについて判断が及ぶ可能性も考えられるところ、そこで手続に瑕疵があると判断された時、抗告人としては、私法上あるいは公法上の不利益な影響を受けることがあるかもしれない。しかし、ここで想定されるいくつかの影響なるものは、結局は事実上のものにすぎないか、判決の判断内容を論理的前提にしないものであって、そこで、抗告人の有する見解と異なる判断がなされたからといって、法的にそれに拘束されるものでないことは明らかである。そのうえ、抗告人の代表取締役が被告となっている本件訴訟で、その代表取締役によって代表される抗告人が補助参加して取締役会の手続の適法性を主張立証することが、会社が右適法性について正当に主張立証をしたことになるのか疑問が生ずるところでもある。このようにみてくると、前記民事訴訟の構造を曲げてまで抗告人の補助参加を許す必要はないと結論すべきものである(なお、共同訴訟人の一人が相手方と他の共同訴訟人との訴訟について、相手方に補助参加することを認めた昭和五一年三月三〇日最判《判例集未登載》は本件とは事案を異にするものである。)。

4 以上によれば、抗告人は本件訴訟において被告らを補助するために参加する利害関係を有する第三者ということはできない。

三  よって、これと同旨の原決定は相当であり、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官宮本増 裁判官野田弘明 裁判官天野登喜治)

別紙抗告状<省略>

別紙参加を相当とする理由<省略>

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